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中国における集団的労働紛争の現状 (1)
发布时间:2013-10-10

 
中国では、特に華南・東地区の製造業を中心に、農民工による集団的労働紛争が頻発している。農民工は、農村戸籍でありながら、都市部で出稼ぎ労働者として就労している者であるが、特に 1980 年代生まれ以降の新世代農民工を中心として、都市部への定住の傾向を強めつつつある。新世代農民工は、第一世代に比べ、教育水準が高く、価値観も多様で、情報ツールの利用にも長けている一方で、我慢強くなく、不平等・格差に敏感で、職場への定着率も低いといわれる。また、労働組合に加入しない者が多く、現在頻発している集団的労働紛争の多くが、労働組合のコントロール外で突発的に起こっているものである。そして、中国では、労働組合が労働者の利益代表としての機能を果たしていないだけでなく、労使の利益調整をめぐる紛争解決手続が法律上整備されていない。短期的に、労働組合の機能が変化したり、集団的労働紛争の解決手続に関する立法が整備されたりするとは考えにくく、企業としては、労働者との交渉窓口として労働組合を頼りにすることもできず、いざ集団的労働紛争が発生した場合にも、地方労働行政の場当たり的な対応に委ねざるを得ない状況にある。そこで、労働紛争の企業内での調停機能を強化したり、紛争の未然防止のために日常的な労使コミュニケーション制度を創設したりする取り組みが進められている。
 
Ⅰ 中国における集団的労働紛争の現状
 
1 中国の労働問題の特徴
 
(1)はじめに中国は、「世界の工場」として、日系企業をはじめ多くの国の外資系企業の進出を受け入れ、長期にわたる経済発展を続けている。その一方で、2010 年の広州ホンダ事件に代表されるように、収入格差や労働条件・安全衛生などをめぐって労働紛争が多発している。企業にとって、こうした労働紛争への対応が、不可避の課題であることはいうまでもない。特に、日本企業の経済活動における中国のプレゼンスの高さを踏まえると、中国での労働紛争への対応は、極めて重要な課題である。
 
(2)社会主義市場経済の中国ところが、中国での労使関係は、日本におけるものとは、前提となる労働法の内容や労働者の考え方も異なるため、日本での労使関係のノウハウをそのまま持ち込むことが難しい。そもそも日本の労使関係自体が、「日本的」と称される特徴を持ったものであり、日本の社会経済基盤や文化を背景に形成されてきたものである。そして、周知の通り、中国が「労働者階級の指導する労農同盟を基礎とした人民民主主義の社会主義体国家」であり、その基礎が、「全人民所有制及び労働大衆による集団所有制である」ことは、「社会主義市場経済」の重要な要素として私営企業等の非公有制を認めているとはいえ、この国の法制度(特に労働法制)を検討するうえで、忘れてはならない。端的にいえば、公有制における労使の利益対立は、基本的に予定されていないのである。また、時には、日中両国間の政治的問題が、不買運動や輸出入規制等といった、ビジネスにおいて一企業では対応困難な状況を生み出すこともある。
 
(3)戸籍管理制度中国の戸籍制度は、1958 年制定の「戸籍管理条例」により都市戸籍と農村戸籍に分かれており、農村からの出稼ぎ労働者(農民工)が沿海都市部の産業の重要な労働力となって経済発展を支えている。しかし、それは、形式的には農業に従事すべき者の一時的な非農業への就労であって(ただし、実態としては、恒常的な農村部での過剰労働力への対応でもある)、長期にわたって労働に従事する都市戸籍の労働者とは、社会保障等において厳然とした区別が設けられている点に留意しなければならない。そして、調和(「和諧」)社会を目標する政府が特に重視しているのは、農村戸籍でありながら、都市部で労働に従事する農民工への対応であり、農民工の集団的労働紛争の予防と解決が、重要な課題となっている。農民工の問題は、社会主義市場経済の下での経済発展と戸籍問題、格差問題等の社会矛盾の一端を示すものであり、同時に企業経営のリスクとして認識しなければならない。 
 
2 中国における集団的労働紛争
 
(1)中国の集団的労働紛争中国において、集団的労働紛争について、労働紛争仲裁委員会での受理ものとなる。これは、同一内容の個別的労働条件に関する紛争が複数の労働者によって主張された場合に、その代表者を決めて、仲裁等の手続で解決するための便宜的なものであり、その実質は個別的労働紛争の集合体という意味合いを持つ。
しかしながら、現実には、集団的な労働紛争は発生しているのであり、地方の実情に合わせて、必要に迫られた地方政府が、独自のシステムで解決に当たっている。具体的には、労働集約型の製造業が多い上海市・浙江省・江蘇省等の華東地域や広東省を中心とする華南地域である。
 
(2)農民工による集団的労働紛争発生地域からみると、全体の 40%以上が華南地方(特に広東省)であり、次いで、華中(河南、湖北、湖南)、華東(江蘇、浙江、上海)が多い。業種でみると、製造業等の工業が約 60%を占め、次いで交通運輸が約 30%となっている。紛争の原因からみると、賃金・福利が最も多く、半数以上が賃金等をめぐるものである。紛争の日数では 1 日及びそれ以下のものが 38%、2 ~ 5 日が40%の一方で、10 日以上のものが 14%ある。また、広東省や浙江省、上海市の労働紛争仲裁機構が受理した紛争のうち、農民工によるものが、共通して全体の約 60%を占めていた。一方で、紛争の発生・解決に当たって、労働組合の関与がみられた事例はほとんどない。むしろ、広州ホンダの事例では、地域の労働組合が介入した結果、紛争がより激化したことが明らかとなっている。結果からみると、労働者が賃上げ等の成果を勝ち取った事例は少なくなく、こうした成功事例が労働者にとって労働紛争を引き起こす動機ともなっている。
 
(3)中国における労働紛争解決手続をみる視点ところで、日本において、特に集団的労働紛争への対応を考えるとき、まず労働者側の窓口と考えられるのは労働組合であり、使用者は、労働組合との団体交渉等の手続を通じて解決への対応を図る。そして、労働組合は、団体交渉の過程で団体行動(争議行為を含む)を通じた圧力手段に訴えることもありうる。さらに、使用者が団体交渉を拒否するなどの不当な対応をとった場合には、労働委員会を通じた不当労働行為に対する救済制度が用意されている。この場合、日本では企業別の労働組合が多いが、近年では、企業外の合同労働組合に加入して団体交渉を求めるケースも少なくない。いずれにせよ、使用者は、労働組合(具体的にその交渉担当者)を相手方として、労働紛争の解決に向けて交渉に当たることになる。ところが、前述のように、農民工の集団的労働紛争の場合、労働組合の関与は極めてまれであり、中国においては、労働組合が農民工の交渉窓口として機能していない。
また、労働紛争の原因という観点からは、具体的な立法や当事者の労働契約・労働協約に基づく既発生の権利・利益等の履行を求めるもの(いわゆる権利紛争)なのか、労働条件の改善、例えば、賃金をいくら上げてもらうかといったもの(いわゆる利益紛争)なのかも考慮しなければならない。農民工による賃上げ要求は、後者の類型に属するものであり、当事者の協議・和解の促進を通じて利益調整を図ることが解決への主要なアプローチとなる。これに対して、裁判所などの判定型の解決機関は、法律や契約内容を解釈して、具体的な権利等を事後的に確定することを通じて解決を図るものであり、利益調整型の解決には適さないという理解が一般的であろう。そこで、労使の協議の促進等を図る調整型の紛争解決システムが重要となる。
 
3 中国における集団の労働紛争の現状
 
以上の点を踏まえて、中国における労働紛争への対応について、以下のように検討する。まず、労働紛争の当事者として、近年その対応が重視されている農民工等に焦点を当てて考察する。農民工に注目する理由は、集団的労働紛争の多い華東・南地域において、農民工の労働紛争仲裁の申立件数の割合が高く、中国国内の研究においても、農民工の労働紛争予防がホットイシューとなっているからである。
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