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労働者の権益保護強まり対忚を迫られる日系企業
发布时间:2013-09-12

労働者の権益保護強まり対忚を迫られる日系企業 
 

2008 年 1 月の労働契約法の施行以来、中国では労働者の権益保護に向けた動きが一層強
まっている。また、米国発の金融危機以後の急速な経済の回復や、内需?消費の拡大、民生の
改善といった中国政府の政策方針の転換もあり、各地域の最低賃金は大幅に引き上げられて
いる。一方、中国は国土が広大で地域によって賃金水準、労働力の需給環境が異なることから、
地域ごとの状況把握が不可欠だ。
<賃金水準を 5 年で倍増の方針>
中国の GDP は 2010 年以降世界第 2 位となった。しかし 1 人当たり GDP では中進国の域にあ
り、民生の向上や貧富の格差縮小が大きな課題だ。
中国が労働者の権利と利益の保護に注力する象徴的な出来事として、2008 年 1 月の労働契
約法施行が挙げられる。同法の施行前は、工場の従業員は 1 年契約を毎年更新するのが一般
的だった。これは契約満了に伴う労働契約の解消に際し、経済補償金の支払いが義務付けられ
ていなかったためと考えられる。しかしこの労働契約法では、契約満了時の解雇も経済補償金
の支払い対象となった。また、書面での労働契約締結が義務化された。契約期間に関しても、勤
続 10 年あるいは 3 回目の更新で終身雇用へ切り替えることが義務付けられた。
同法は、採用や契約に対する雇用主の意識を慎重なものに変えただけでなく、労働契約に対
する労働者の意識も大きく変えたようだ。実際、同法施行の 2008 年、労働争議案件受理数は前
年比約 2 倍に急増した。しかし、2008 年秋に発生したリーマン?ショックで中国経済は急減速し、
多くの企業が経営難に陥った。このため 2009 年は最低賃金の引き上げが全国的に見送られ
た。
中国経済はその後、4兆元(1元=約12.5円)の景気刺激策をはじめとする一連の大胆な経済
政策が功を奏し、2009 年半ばから急速に回復した。景気は過熱といわれるまでになり雇用も増
えたが、住宅価格や一般物価の上昇も激しく、暮らしに対する人々の不満は高まった。2010 年
は年初から沿海部を中心に労働需給が逼迫(ひっぱく)し、日系企業の間でも夏場を中心に労働
争議が広がった。最低賃金の引き上げが再開されると、その上昇率は多くの地域で 2008年以前
を大幅に上回ることとなった。
2011 年には新たに第 12 次 5 ヵ年規画がスタートした。同規画には可処分所得の伸び率の数
値目標をはじめ、所得政策として低所得者の収入増加、所得格差の拡大抑制といった方向性が
明記された。加えて、同年 4 月の人力資源?社会保障部の全国労働関係工作会議で、この 5 ヵ
年規画期に賃金を 2 倍にするとの考えが示されたと報じられた。また、2012 年 2 月には「就業促
進規画(2011~15 年)」が発表され、最低賃金の上昇率を年間 13%以上にする方針が盛り込まれた。実際の賃金もそのように推移している。


<スト予防には従業員とのコミュニケーションを重視>
労働争議に関する調査として、在中国日本大使館経済部の「中国の日系企業におけるストラ
イキの発生状況について」(2012 年 1 月 18 日、注)がある。回答した 180 社のうち自社でストライ
キが発生したとする企業は、2010 年が 13 社だったのに対し、2011 年は 6 社に減尐した(うち 2
社は 2 年連続)。この 2 年間にストが起きた 17 社はいずれも製造業で、うち 8 社が従業員規模
100~299 人の企業。
2011 年にストが発生した 6 社に原因を尋ねたところ(複数回答)、4 社が「コミュニケーション不
足」、各 2 社が「同地域?業種内の中で自社の賃金水準が相対的に低い」、「周辺企業の賃上げ
の影響」を挙げた。ストの発生防止に効果的と考える対策については、有効回答 139 社のうち 85
社が「従業員とのコミュニケーションの充実」を挙げた。以下、「同地域などとの給与水準の適正
化」が 43 社、「福利厚生、手当の充実」が 27 社など(複数回答あり)。
別途実施した日系企業への聞き取りでは、こうした労務リスクへの対忚として、日本人幹部と
従業員との定期的な食事会や職場環境改善のための満足度アンケートの実施などが挙げられ
ている。また、日本と同様の業績評価制度を導入し、総経理が年 2 回、従業員と 30 分~1 時間
程度個別に面談することで、従業員の不満の吸い上げを行っている企業もある。
労働争議の状況を当局の案件受理件数でみた場合、中国全体としては労働契約法が施行さ
れた2008年こそ急増したが、その後は減尐している。最近の労働争議の発生状況に
ついて、日系製造業や人材派遣会社に聞くと、地域的な差はあるが以前に比べ落ち着いている
との見方が多い。半面、日系製造業の関係者は、労働争議というほどのものではないが、3 時間
や半日といった程度のサボタージュは増えているという。

<採用難の背景に中西部の賃金上昇と若者の意識変化>
雇用情勢は、失業率でみると大きな変化はない。そもそも失業率の統計は工場労働を支える農村戸籍の農民工が調査対象外で、従来変化に乏しい。これに対し全国の求人倍率の調査は対象に戸籍の縛りがない。そのため、2008年末の急激な景気の冷え込みや 2010年初頭の労働
需給逼迫の際は、失業率統計に比べ変化は大きかった。2012 年 1~3 月期の求人倍率は、日系企業の労働争議が多発した2010 年 1~3 月期を若干上回っている。

日系企業では、人材が確保できないほど労働需給は逼迫していないが、人材が集まりにくくな
ったといわれる。質が落ちている、若年層の忚募が尐ない、といった声もある。
沿海部での採用が難しくなっているのは、人材の供給地でもあった内陸部の大都市での賃金
上昇と労働需要の増加が背景にある。湖北省武漢市では「2010 年ごろから仲介業者を用いても
採用が難しく、特に 20 代の従業員は集まらない」という。中西部地域の大都市では、最低賃金で
広東省の都市を上回ることもある。四川省と重慶市では、2012 年の最低賃金はともに前年比
20%を超える 1,050 元に改定され、広東省の 3 類都市(スワトウ、恵州、江門)の 950 元、4 類都
市の 850 元を上回った。
また、沿海部の大都市では住居費や食品価格をはじめとする生活コストが上昇し著しく暮らし
にくくなっていることも、相対的に内陸の大都市での就労を魅力的なものとし、沿海部への出稼
ぎ意欲を削いでいる要因だという。四川省では、一人っ子政策施行下で生まれた 30 歳過ぎの労
働者が、親の面倒をみるために故郷に回帰するケースが増えているとの見方もある。
そのほか、従業員の意識が大きく変化し、定着率が以前より明らかに下がっているとの指摘も
ある。中でも「80後」、「90後」(1980年代生まれ、1990年代生まれの世代)については、きつい仕
事はやりたがらない、すぐに辞めてしまうといった評価がある。
なお、従業員の安定確保の方策としては、一般募集(工場正門前に要項を掲示し直接募集す
る)以外に、a.特定の専門学校と人材あっせんの契約を締結する、b.人材紹介会社を活用する、
c.人材募集のエリアを拡大する、d.採用に際しての年齢制限を緩和する、などの例がある。
他方、ホワイトカラーについては、昨今の統括拠点の設立増加に伴い、日系企業の人材ニー
ズに変化がみられるという。従来、日系企業の求人の中心は、日本人幹部の通訳をこなせる人
材だったが、最近はブランド戦略、リスク管理、知的財産権などの専門知識と業務経験を持つ人
材や、管理職層に対するニーズが高まっている。販売部門でも、中国人が中核となるケースが
増えており、新たに駐在させる日本人を従来の幹部クラスから若手に切り替え、中国人幹部を補
佐させるようにしたケースもある。中国拠点の経営を担う中国人材を引き留める手だてとして、日
系企業は経営への参画による中国人スタッフの意識の変化、モチベーションの向上にも期待を
かけている。
<賃金は 10%台半ばの伸びが定着>
ジェトロの「在アジア?オセアニア日系企業活動実態調査(2011 年度調査)」(以下、「実態調
査」)によると、最も多くの中国進出日系企業(84.9%)が経営上の問題点として挙げたのは「従
業員の賃金上昇」だ。
中国の平均賃金(在職者)の上昇率は、2010 年の 13.5%に対し 2011 年は 14.3%と高まった
。平均賃金は 2006~11 年の間で 2 倍になっている。金融危機でいった
ん鈍化した賃金上昇率は、再び高まる傾向にある。企業の形態別に賃金の水準をみると、国有
企業の賃金水準が外資系企業に近づきつつある。中国経済の台頭と先進国経済の不振を反映
してか、今日の中国では外資系企業よりも国有大手企業の方が人気が高い、との声もよく聞か
れる。国有大手企業は、経営の安定度や福利厚生の良さも魅力のようだ。
前述の在中国日本大使館経済部の「中国の日系企業におけるストの発生状況について」によ
ると、2011 年の回答企業 180 社のうち 149 社が、ストとは関係なく賃上げを実施し、その賃上げ
率は「10%台が最も多い(62%)が、20%台の引き上げも全体の 2 割を占めた」としている。


<地域や職層で異なる労務リスク>
中国は国土の広さや多様な自然環境を反映し各地の経済状況もさまざまで、平均値で語るこ
との難しい国だ。賃金水準や労働需給も同様で、労務リスクの問題も地域別に濃淡があり、職層
によっても企業への要求に違いがみられる。
労働争議については、華北では深刻な事例はあまり聞かれないが、華南では法人格を持たな
い来料加工工場の法人化を契機に経済保障金の支払いを求められ、争議になる例も尐なくな
い。
そのほか、会社に対する労働者の要求に、次のような違いが指摘できる。都市部のホワイトカ
ラーは、労働争議のリスクが低い層とみられている。職場が交通至便な市街地に密集している
ので、転職して通勤が極端に不便になることもない。このため、労働条件が合わなければ、そこ
で改善を要求するより、より良い条件を求めて転職する傾向にあるという。これに対して、郊外の
工場で働くブルーカラーは、労働争議のリスクが相対的に高いとみられている。賃金水準が低い
ことに加え、転職で通勤難となる可能性があるため、在籍している企業で労働条件の改善を要
求する傾向が強いという。
工場従業員の場合、賃金以外にもポイントとなる労働条件がある。多くの日系企業は、a.食堂
の質(味、品数、清潔さ)、b.シャワーの管理(待ち時間が短く故障が尐ないこと)、c.通勤バスの
適切な運行(ターミナルの乗降場所、運行時間などの点で利用しやすいこと)は、円滑な労使関
係を維持するための重要な要素と指摘している。
宿舎の従業員が多いか、地元から通勤する従業員が多いかによっても、不満の出方が違う。
農民工など出稼ぎの従業員が多い場合、宿舎が不満の対象となり、その対処が必要になる。地
元から通勤する従業員が多い場合は、両親の家に同居しているためか、賃金面の要求があまり
厳しくないこともあれば、家賃の上昇を理由に賃上げ要求をするケースもある。

<労務リスクへの対処に 6 つのポイント>
労働争議や賃金上昇といった労務リスクへの対処のポイントとして、日系企業が挙げる点を大別すると、労働環境の改善、周辺企業の賃金相場の把握、人材募集手段の多元化、生産の省
人化、中国内陸部や他のアジア諸国?地域への移転、経営の現地化、の 6 つとなる。具体的に
は以下のとおり。
「労働環境の改善」は、従業員とのコミュニケーションを密にし、働き方や施設その他の不満を
洗い出し、改善していくものだ。食堂、シャワー、通勤バス、宿舎といった施設の適切な管理は、
とりわけ重要だ。
賃金水準も不満の対象となり、引き上げが不十分なら、争議が発生するリスクがある。しかし、
引き上げ過ぎれば、それだけ収益が減る。この点、多くの日系企業関係者は「周辺企業の賃金
相場の把握」が不可欠と指摘する。中国人の労働者は、近隣の職場の賃金水準?賃上げ率への
関心が極めて高く、労働者間での比較、情報交換がよく行われているようだ。近隣の同業種企
業の賃金動向は、特に留意が必要だろう。
従業員の確保策として、「人材募集手段の多元化」がある。前述のとおり、一般募集以外に、
特定の専門学校との人材あっせん契約の締結、人材紹介会社の活用、人材募集エリアの拡大、
採用に際しての年齢制限の緩和、などが考えられる。
「生産の省人化」は、労務費の増加に対する直接的な対処法だ。生産現場の人の動きを再考
し、配置する人数を減らす省人化のほか、ライン変更に要するプロセスを見直し、所要時間を削
減するという対忚も含めることができるだろう。多くの企業にとって現実的な対忚とされている。
一般的に省人化でイメージされるのは機械化投資だろう。販売の急拡大が見込める場合は、
特に有効な対忚といえる。北京のある食品メーカーは、これまでは人手に頼った生産体制だった
が、今は生産量の拡大に設備投資で対忚することとし、賃金上昇を見越して人は増やさず、人
件費比率は従来どおりに保つ方針だという。この会社の場合、需要拡大の追い風があり売り上
げが伸びているため、1 人当たりの賃金を十分に引き上げることができているという。
しかし高度な機械の導入には、相忚の資金が必要だ。例えば産業用ロボットを導入する場合、
ロボットそのものへの投資のほか、各種の変更に対忚するためのプログラムの書き換えやメンテ
ナンスにも人員が必要となり、コストが発生する。とりわけ製品の世代交代が頻繁な場合、それ
だけ手間が増える。それでも珠江デルタ地域では、自動化機器を導入する製造業が増加してい
るという。多額の投資をしても同地域で事業を続ける背景として、珠江デルタ地域のサプライチェ
ーンを離れることのリスクの大きさが指摘できる。なお設備については、日本からの輸入ではなく
中国製に切り替えてコストを下げるといった対忚もみられる。
生産ラインのトップのような重要なポジションは、中長期的に働いてもらえるよう、それなりの
待遇を行う半面、一般の従業員については、入れ替えによる生産への影響が最小限に済むよう、
マニュアル化や半自動化を推進しているという現場もある。従業員の定着によるスキルアップは
企業にとってプラスで、定着率の高さは職場環境の良さを図る尺度にもなっているが、コストアップへの関心が徐々に高まりつつある中、定着率に過度にこだわらない現場もある。
なお、機械化については、人件費上昇への対忚以外にもさまざまな理由が挙がっている。ま
ず品質の安定だ。人手で行ってきた部品の微細加工工程を機械に置き換えることで製品の質を
安定させ、競争力を高められるという。また食品メーカーの工場は、安心?安全の実現のために
機械化を進めているという。そのほか、労災予防策として、自動化を推進しているところもある。
「中国内陸部や他のアジア諸国?地域への移転」については、そうした対処が可能な企業もあ
れば、不可能な企業もある。生産が多くの関係企業の協力によって行われている場合、移転先
もそうした産業基盤がある地域に限られる。将来的に沿海部からの移転が可能な地域は、中西
部?東北部などに広がっていくと考えられる。
しかし現状は厳しい面もある。ある内陸部の企業は、総コストのうち自社の人件費部分はまだ
吸収可能なレベルだが、沿海部からの部品調達コストの高騰には耐えられなくなってきていると
いう。沿海部の企業では、バングラデシュやミャンマーなど、人件費の安い国への生産委託も選
択肢として検討するところも尐なくないが、技術力や納期の点で、全ての生産をそうした国にシフ
トすることは現状ではできないとの評価もある。
「経営の現地化」は、多くの企業が対忚策として挙げている。第 1 に、人の現地化がある。日本
人駐在員を中国人に単に入れ替えるだけで、現地化といえるのかどうかは議論のあるところだ
が、人事?労務管理について、その核となるポストに中国人を登用するとか、合弁企業の場合に
は労務管理をパートナー企業に任せているとかいうケースは多い。日本人の駐在員は幹部クラ
スの派遣から若手に切り替える、定年あるいは早期退職した技術系の日本人を現地で直接採
用するといったケースもある。
次に調達の現地化がある。多くの企業が、現地調達率の引き上げによるコスト低減を目指し
ている。これも経営の現地化の 1 つといえるだろう。
最後にコスト削減とは異なるが、販売先の現地化が指摘できる。インタビューでは、多くの日系
企業の幹部が、中国の賃金上昇を時代の趨勢(すうせい)とし、これを需要拡大の機会と捉え、
中国国内販売の拡大を目指している。
世界の対中直接投資は 2011 年に 1 ケタの伸びにとどまったが、日本からは 5 割増加した。
2012 年に入ってからも、世界の対中直接投資が前年比マイナス基調で推移する中、日本は 2 ケ
タの伸びを示している。ほとんどの日系企業が、中国の賃金上昇を経営課題に挙げているのは
事実だが、企業がそれを単にリスクと決めつけているとは思えない。中国の経営事情に詳しい専
門家は、労働集約型産業でコストだけが勝負の企業では、中国外への移転や廃業が行われて
いると指摘するが、その一方で多くの企業が今日の中国の魅力として市場規模や成長性、産業
集積を挙げている。中国で作り中国で売る現地販売の強化は、可処分所得増への対忚として有
効と思われる。

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