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日本型人材マネジメント
发布时间:2013-08-27

1.中国事業環境の変化 -グループ総力戦へ-
 低コストで豊富な労働力を求め、魅力的なものづくり拠点として中国に進出していた時期は終焉に近づいている。昨今の人件費上昇と労働力不足によって、低コストで豊富な労働力という進出のメリットが失われてきているからである。 
 一方、中国沿海部以外の都市においても購買力が高まり、市場が地理的に広がっている。また、人口ボリュームゾーンの購買力底上げに伴い、顧客となりうる層が深まっている。こうした市場の「広がり」と「深まり」を理由に中国の市場としての魅力は増してきており、その市場規模ゆえに、市場攻略を通じたグループ全体に対する中国市場の貢献期待は以前よりも高まっている。

 ただし、中国市場攻略は難しい。市場の「広がり」「深まり」によるニーズの多様化・高度化、またそれらへの対応難度が高まっており、単に、既存製品・サービスを、既存のサプライチェーンを通じて市場へ供給しているだけでは成功しない。「広がり」と「深まり」によって多様化したニーズを把握し、そのニーズに応える製品・サービスを開発し、効率的・効果的に広大な中国市場に投入することが求められる。

 この課題に在中国日系企業は果敢に挑んでいる。これまでのように事業部門/機能がそれぞれ中国において適宜課題を解決するというレベルでは限界がきている。そのため、各企業はニーズへの対応、ひいては市場攻略というゴールから遡って思考し、課題を見極め、解決しようとしている。また、課題を単一機能のみの視点で捉えるのではなく、その機能の川上・川下機能も含め事業の流れを意識し、グループ内における他事業部門との協業を模索しながらその解決を試みている。

 例えば、既存製品で市場ニーズに対応できなければ、他事業部門がもつ技術を組み合わせて新たに製品を開発するという取り組みがある。各事業部門がもつ個別のサービスを組み合わせて、顧客ニーズによりフィットしたソリューションを開発し、顧客のビジネスプロセスにより深く入り込んでいき事業機会を拡大するという取り組みもある。また、市場ニーズに適合した製品・サービスを開発したとしても、「広がり」「深まり」に対応する多様な製品を迅速に効率的に生産し、顧客に届けなければ市場攻略は実現しない。そのために、開発・設計機能を中国へ移管するという取り組み、新たな技術を伴う製品ラインの迅速な立ち上げのために、その技術を有する他事業ものづくり拠点からの人材を派遣してもらい、中国内で技術移管・ノウハウ共有を推進するという取り組み、採算性を追求するために中国において事業を跨った調達、サプライチェーンの共同活用/そのための再整備等の取り組みがある。

 中国市場攻略方法は多種多様で、難度は高い。これまでのように各事業・各機能が孤立した視点で課題解決に取り組む、また、社員が組織の階層構造という縦軸での指示命令系統に従って自らの役割責任を果たすのみでは課題は解決しない。中国市場攻略という目的を果たすために、顧客への価値提供をグループ内各事業・各機能がどう連携して行うのか、という横串(バリューチェーン)視点で課題を見通す必要がある。そして、中国にある経営資源(ヒト・モノ・カネ・技術・ノウハウなど)の配分を見直し、事業機会を最大化するための革新的で有機的な連携を通じた取り組みが求められている。まさに、グループ総力戦である。
 では、このグループ総力戦において組織・人事上のポイントは何であろうか。


2.これから中国で更なる拡充が求められる横串調整型人材の要件
 組織の視点では、まず、各事業及び各機能を繋ぐ「交点」となる組織の整備が必要であろう。その組織に経営陣が社内における正当性(なぜその組織が存在しているか、全体目線で関係者に説明する等)を与え、その組織が支障なく動ける環境を整えることから整備は始まる。しかし、最も重要な課題は、その「交点」で活躍する人材を如何に確保するかであろう。「交点」で活躍する人材確保の必要性は以前から言われていたが、今この時期、確保に向けた本気の取り組みが求められている。そこで、この人材を「横串調整型人材」と銘打ち、確保する上でその指針となる要件を次のように整理してみた。
企画力と調整力
全体目線で中国事業拡大計画を合理的に思考することができ、その事業拡大上の関係者の利害を洞察し、その計画への賛同と協力を得る力が求められる。
自社の幅広く、深い理解
全社目線で事業拡大に向けた企画や調整を行うために、自社への広く・深い理解が不可欠である。市場ニーズを把握したとしても、自社にできること、できないこと、工夫すればできること等自社の強み・弱みを理解していないと事業拡大のアイディアは発想できない。また、各事業・機能を横串しで調整する際、自社の意思決定プロセスの特徴、効果的なコミュニケーション(根回し等)を理解していないと、その計画を推進する上で大きな障害となる。
社内関係構築力
調整を行う上で、関係者からの信頼を得ることは不可欠であり、信頼関係を築いている自社内において影響力のある組織・人の数は多ければ多いほどよい。関係構築の鍵(相手の利害を洞察した上でWin-Winな成果の提案、熱意など)を(2)の自社理解から導きだし、企画と調整を通じて鍵となる社内人脈を構築する力が求められる。
会社・仕事への愛着・誇り
最も重要な要件となる。事業間・機能間で横串調整をする際、関係者から誤解・コンフリクトも起き易い。また、明確な指示命令・階層構造に基づいて活動するわけではないので、自己を統制し、常に創造的な気持ちとアクションへの関心を維持しなければならない。忍耐や粘り強さが求められる。この忍耐や粘り強さは「会社をよくしたいという気持ち」と自己実現が一致した時に強化される。つまり、会社・仕事への愛着・誇りをもっていることが重要な要件となる。

 もちろん正確に要件を特定するためには、それなりのプロセスを踏まなければならないが、事業環境から求められる要件を整理すると上記のようになるだろう。これら要件を満たした横串調整型人材を如何に確保するべきか、これが課題となる。


3.想起される日本型人材マネジメント -新たなチャレンジ- 
 横串調整型人材要件を満たすためには、自社における一定の勤務経験が所与の条件となる。外部から採用したとしても、要件を満たすためには一定の時間が必要となるだろう。長期勤続を実現し、評価制度・育成(登用・配置含む)を通じて上記要件を満たす人材を確保するというのが、初期的な取り組みになる。評価制度は社員を方向付け、動機付けるためのツールである。ゆえに評価項目に要件獲得に繋がる項目を設定し、評価サイクルをまわしていく中で、あるべき姿と実態のギャップを埋めるための育成施策を講じるという取り組みである。
 人材要件を鑑みると評価すべき項目例として以下が考えられる。

短期的成果ではなく、事業拡大計画の質/中長期の成果
定量的な業績ではなく、定性的な貢献度及び熱意・社内対人関係
想定される重点課題ではなく、都度発生する重大問題への対応・解決
社内キーパーソンとの関係構築等、行動・スキル重視 etc.

 育成は、定型的、かつ、一般化されたスキルより、経験を通じて向上するスキルの保有が求められるため徒弟的なOJT及び全体目線の修得、自社の理解、社内人脈構築を促進するためのローテーションが主体となるであろう。

 さて、ここまで書いてお気付きの方もいらっしゃるであろうか。横串調整型人材の要件と確保するための施策は、実に日本型人材マネジメント―その定義については議論の余地はあるが―を想起させる。

 中国人材は離職率が相対的に高く、1つの会社で通用する経験・スキルより外部市場で価値となる経験・スキルに対して関心が高かった。ゆえに上記のような評価項目や育成は親和性が低く、明確な指揮命令系統・階層構造から導かれる職務を基準とした人材マネジメントの展開がこれまで中国における日系企業のチャレンジであった。
 しかし、最近は中国労働市場も変化し、長期雇用、ローテーションも施策次第では実現可能になりつつある。中国において長期雇用を前提とし、グループ全体からの貢献期待に応えるためにも、中国人材による横串調整型人材の確保も本気で考える時期に来ているかもしれない。
 もちろん中国は日本ではない。そして、中国人材全員が横串調整型人材になる必要はない。既に職務基準の人事制度が導入されている場合は、既存制度との整合性・バランスをとる必要もある。また、横串調整型人材といっても中国においては評価コミュニケーションやキャリアパスの提示が日本以上に重要なことに変わりない。中国で日本型人材マネジメントを展開する難しさは存在する。ただし、これまで以上に市場攻略・グループへの貢献が求められている中国だからこそ、新たなチャレンジとして、日本型人材マネジメントを通じた横串調整型人材の確保に挑んでみる価値があるのではないか。

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